日本が抱えているヤングケアラーの実態とは?対策と動きについてご紹介
皆さんはヤングケアラーと言う言葉はご存知でしょうか。
ヤングケアラーとは、その名の通り若者が親などの老人をケア(=介護する)することを指しています。
超高齢化社会となりつつある日本でいよいよ顕著な傾向として現れそうなこの現象について紹介していきます。
ヤングケアラーの概要
初めに記載した通り、若者が介護を行うことを表しています。
例えば、家族の誰かに介護が必要となった場合、一般的には、配偶者や子どもが介護をするのが流れかと思います。
しかし、親が病気や事故によって介護が必要になってしまった場合、未成年がその役割をせざるを得ない状況になります。
しかし子供にとっては非常に多感な時期で、心身ともに未発達の子どもが親などの介護をするには負担も大きく、さまざまなハードルが待ち構えていることは実はあまり認知されていないのです。
つまり、ヤングケアラーの厳密な定義としては、家族にケアが必要な人がいる場合に、大人が担うべきケアの仕事を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを受け持つ、18 歳未満の子どもと定義されているのです。
こうした動きに、欧米ではいち早く動いています。人権意識の高い欧米諸国は「子ども一人ひとりも、独立した一人の人間である」という思想が強く根付いている為、介護に時間を割かれ、勉学や遊びなど自由に時間を使えなくなる子どもがすくなくなるようにヤングケアラーに対する支援体制を早くから整えています。
例えば政府と学校が連携し、ヤングケアラーたちに対するヒアリングや調査を重ね、そこで得た知識を国の対策として反映することに成功しています。
日本でも、このようなヤングケアラーの現象が深刻になっており、女性の社会進出が進むと同時に、晩婚化で高齢出産も増えてきていることから、子どもが成人を迎えずき親が何らかの病気にかかり要介護状態になる、そういったヤングケアラーのパターンが増えて来ています。
また、シングルマザー(またはシングルファザー)の増加により、必然的に親の世話をしなければいけない環境に置かれている子どもも増えて来ているのです。
先述のように、18歳くらいの子供は勉強や部活に活発な時期です。この時期に家事や家族の介護に時間を割いていると、学業に悪影響を及ぼしますよね。
遅刻や宿題忘れ、欠席、部活動に参加できなくなるなどや、友だちと遊ぶ時間が奪われコミュニケーション能力がなくなったりしてしまいます。
それだけではなく、勉強もできないので大学進学等の道筋も閉ざされかねないのです。
最悪の場合、学校や仕事を辞めざるを得なくなります。同時に、働いていたならば家族にのしかかる経済的負担も大きなものになってしまうのです。
外国の事例と個人でできることは?
イギリスのヤングケアラー支援では、1980年代後半より国を挙げてヤングケアラーの支援に取り組んできています。
序盤でお伝えしたように、介護するにあたり子どもの教育を受ける権利が奪われてしまうという危機感から、率先して実態調査と対応策が取られてきました。
例えば、現在イギリスの学校では、放課後にヤングケアラーの生徒たちが集まって情報交換など交流を図るプログラムが組み込まれています。その場には、NPOなどの支援団体、学校の担当教員、地域ボランティアといった大人たちも同席し、ヤングケアラーたちをサポートしています。同じような境遇の仲間を見つけることで、自分自身がヤングケアラーであることに誇りを持てるような、元気が出るような考えを植え付けられるようにしているのです。
では日本ではどのようなことができるのか、それは、負担軽減のために、まずは悩みを打ち明けるところから始めるべきなのです。
と言うのも、学校の教員が生徒の介護負担に気づいた原因で圧倒的に多かったのは「本人からの相談」が多いのです。
一方で「学校を休みがちになってしまう」「家庭訪問等で判明する」などの理由はさほど多くなく、ヤングケアラー問題では周囲の大人が気づいて発覚するケースは少ないそうです。
介護者である子どもが周囲に悩みを打ち明けることがいかに解消するにあたり重要であるかを示している結果とも言えるでしょう。
事実を知ることによって、教員や友だちなどはヤングケアラーを微力ながらサポートすることができます。
家庭内の介護はプライバシーな問題であるので、なかなか人に話すことをためらう人も多いかとは思いますが、信頼の置ける人にきちんと現実を話す勇気も必要で、そうした勇気に対して何でも気軽に相談できる環境づくりが大事なのです。
まとめ
日本ですが、2020年3月、ようやく埼玉県で日本初となるケアラー支援条例が成立されました。この条例の中で、18歳未満を対象としたヤングケアラーへ対する配慮も記載されています。
こうした国の支援も大切になって来ますが、ヤングケアラー問題を解決していくためにはまずは大人と子どもたちの間で風通しのよい信頼関係を築いていくことが重要なんですね。
こうした小さな働きから、その人を救っていく道筋が生まれていくのですね。